倉庫・車庫(ガレージ・カーポート)・蔵の解体工事の費用相場・業者依頼のポイント
「古くなった倉庫を撤去したい」「空き家と一緒に蔵を解体したい」「車庫の屋根が壊れたので取り壊したい」。このような声は、全国の住宅や施設のオーナーから多く聞かれます。使われなくなった建物をそのまま放置しておくと、老朽化による倒壊リスク、害虫・害獣の住処化、景観の悪化といった問題を引き起こす恐れがあるため、適切なタイミングで解体工事を検討することが大切です。
中でも倉庫・車庫・蔵といった付属建物は、居住空間ではないため後回しにされがちですが、構造や材質によっては重機が必要になるなど、思った以上に手間や費用がかかるケースもあります。「小さな建物だからDIYで解体できるのでは?」と考える方もいらっしゃいますが、安全性や法的な問題からも注意が必要です。
今回の記事では、倉庫・車庫・蔵の解体工事について、種類別の確認ポイントや費用相場、業者に依頼する際の注意点、自力での解体が可能かどうかまで、幅広く詳しく解説します。
倉庫・車庫(ガレージ・カーポート)・蔵の解体工事
倉庫の種類・確認が必要な要素

倉庫は、住宅や事業所の敷地内に建てられる物置や保管スペースとして利用される建物です。
一見するとシンプルな構造に見えますが、建材や施工方法によって解体方法や費用が大きく異なります。解体前には、倉庫の種類や構造、周囲の状況をしっかりと把握しておくことが重要です。
倉庫の主な種類
倉庫には以下のような種類があります。
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木造倉庫(在来工法)
古くからあるタイプの倉庫で、住宅のように柱や梁で構成されています。築年数が長く老朽化している場合、解体は比較的スムーズに進むことが多いですが、アスベストを含む建材が使用されている可能性もあります。 -
軽量鉄骨倉庫(プレハブ・鉄骨構造)
近年はこのタイプが主流です。外壁にスレートやガルバリウム鋼板を使用していることが多く、重機やガス溶断を使っての解体が必要になる場合があります。一般的に木造よりも解体費用は高めです。 -
コンテナ型倉庫
海上輸送用コンテナを再利用した倉庫で、固定方法によっては簡単に撤去できる場合もあります。ただし、基礎コンクリートと一体化していると、重機での引きはがし作業が必要になります。 -
ブロック造の倉庫
外壁や構造がコンクリートブロックでできている場合、解体には粉砕機や重機が必要です。倒壊の危険もあるため、安全対策が必須です。
解体前に確認しておくべきポイント
倉庫を解体する際は、次の要素を事前にチェックしておきましょう。
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基礎の構造(ベタ基礎・布基礎・独立基礎)
基礎部分の解体有無によって費用が変動します。特にコンクリートを厚く打設している場合は、解体費用が高くなる傾向があります。 -
建材にアスベストが含まれていないか
屋根材や外壁にスレートや波板が使われている場合、アスベストの有無を専門業者に調査してもらう必要があります。含有が確認されれば、専用の処理手続きと追加費用が発生します。 -
電気・水道などのインフラの有無
照明やコンセントが設置されている倉庫は、事前に電気業者による撤去が必要です。水道管が引き込まれている場合も、止水処理を含めて対応を検討します。 -
解体現場への搬入経路の広さ
大型重機が必要な場合、通行可能な道路幅や隣地との距離が問題になることも。狭小地では小型機械や手作業で対応するため、工期と費用に影響します。 -
倉庫内の残置物の有無
解体前に倉庫内の荷物を完全に撤去しておかないと、業者に処分を依頼することになり、処分費用が別途かかります。特に農機具や金属製の棚などは、重量があるため回収費が高めになることもあります。
解体に適したタイミング
倉庫の解体は、台風シーズン前や冬の凍結が始まる前の春・秋に行うのが理想です。天候が安定しているため、作業がスムーズに進みやすく、近隣への配慮もしやすくなります。
車庫(ガレージ・カーポート)の種類・確認が必要な要素

車庫の解体工事は、倉庫や蔵と同様に建材や構造、築年数などによって難易度や費用が変わります。
見た目がコンパクトな分、簡単に解体できそうに思われがちですが、地中の基礎が深く設けられていることも多く、油断は禁物です。
車庫の主な種類
車庫には主に以下の3タイプがあります。それぞれ解体の際に注意すべきポイントも異なります。
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ガレージ(木造・鉄骨造・RC造)
ガレージは壁やシャッターで囲まれているため、「建築物」として扱われます。木造ガレージは比較的解体しやすいですが、鉄骨造やコンクリート造(RC造)のガレージは重機やハツリ機を用いる必要があり、騒音や振動、粉塵の発生も伴います。耐火建築物の場合は行政への届出も必要です。 -
カーポート(アルミ・スチール・木製などの屋根付き駐車スペース)
柱と屋根のみの簡易な構造ですが、基礎がしっかりしている場合も多く、柱を切断し基礎を掘り起こす必要があります。最近では太陽光パネル付きのカーポートもあり、解体には電気工事士の立ち会いが必要なケースもあります。 -
ビルトインガレージ(住宅と一体型)
建物の1階部分などに駐車スペースを設けているタイプです。この場合、構造上のバランスや耐震性にも影響するため、車庫部分だけの解体は非常に困難です。専門の建築士の判断と補強工事が必要なこともあります。
解体前に確認しておくべきポイント
車庫を解体する際は、以下の点をあらかじめ確認しておきましょう。
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車庫の建築確認申請の有無
固定資産税の対象になっている車庫は、建築物として届け出されている場合が多く、解体にも「建築物除却届」が必要です。 -
シャッターの種類(手動・電動)と撤去方法
電動シャッターの場合は、モーターや配線の撤去も必要です。操作盤やリモコンの取り外し費用も別途発生することがあります。 -
屋根材にスレートが使用されていないか
古いカーポートでは、アスベストを含んだ波板スレートが使われていることがあります。専門の調査・処分が義務付けられており、通常の解体より高額になります。 -
車庫の基礎構造(独立基礎・ベタ基礎)
カーポートでも、柱がコンクリートの基礎に埋め込まれている場合、基礎ごと撤去しないと再利用できません。地中障害物として残ると将来の建築に支障が出るため、注意が必要です。 -
雨樋・排水設備の取り扱い
ガレージの屋根には雨樋が設けられている場合が多く、排水経路も確認した上で撤去する必要があります。誤って排水桝を破損すると、追加修繕費がかかることもあります。
解体に適したタイミング
車庫やカーポートの解体も、天候が穏やかで乾燥している春・秋がおすすめです。特に梅雨時や雪の多い地域では作業の遅れや地面のぬかるみによる作業効率の低下が起こりやすいため、避けると安心です。
蔵の種類・確認が必要な要素

蔵の解体は、倉庫や車庫に比べて特に注意が必要な工事のひとつです。蔵は耐火・耐久性に優れた構造で建てられていることが多く、重量や強度のある建材が使われているため、解体作業も大がかりになりやすい傾向があります。
また、文化財級の価値がある場合は勝手に解体できないケースもあるため、慎重な対応が求められます。
蔵の主な種類
蔵には地域ごとにさまざまな特徴がありますが、主に以下のような種類が見られます。
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土蔵(どぞう)
壁に漆喰(しっくい)や土、灰などを塗り重ね、火事や湿気に強い構造になっている伝統的な蔵です。骨組みは木造でも、壁の解体には手間がかかります。特に瓦屋根の場合は高所作業が必要となり、安全対策が不可欠です。 -
板蔵(いたぐら)
壁材に板を張った簡易的な構造で、土蔵よりも軽量で解体しやすいものの、老朽化している場合は瓦や建材が崩れやすく、作業中の落下物リスクがあります。 -
石蔵・煉瓦造りの蔵
一部地域に見られる重厚な構造の蔵で、石積みやレンガ積みの技法で作られています。非常に堅牢なため、専用の重機でなければ取り壊すことができず、解体費用も高額になる傾向があります。 -
鉄骨造・RC造の近代的な蔵
工場や農業施設で使われている鉄筋コンクリートや鉄骨の蔵は、建物自体が大きく、天井も高いため足場やクレーンが必要です。現代的な建材が使用されていることもあり、分別解体の手間がかかります。
解体前に確認すべきポイント
蔵の解体では、次のような事前確認がとても重要です。
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登録有形文化財や景観条例の対象かどうか
古い蔵には文化財に指定されているものや、地域の景観保全の対象となっているものがあります。このような場合、自治体への届出や許可申請が必要で、無断で解体すると罰則の対象になることがあります。 -
屋根材・外壁材の構造と処理方法
瓦屋根や漆喰壁などの伝統建材は、分別解体と廃材処分に手間がかかります。特に古い瓦は崩れやすく、解体時の飛散にも注意が必要です。 -
内部の柱・梁の構造(太さ・組み方)
蔵の柱や梁は太く重厚な木材で組まれており、現代建築よりも部材1本ごとの重量があることが一般的です。切断には大型工具や高所作業が必要で、作業員の人数も多くなる傾向があります。 -
床下・地中に埋設物がないか
古い蔵の敷地には、井戸跡や埋設物(瓦・石材・農具など)がある場合も。地中障害物の処分が必要になると、追加費用が発生します。 -
蔵内の残置物や保管物の撤去
蔵の中には、古道具・農機具・書籍・骨董品などが残されていることが多くあります。業者は原則として「中身が空の状態」での解体を前提としているため、処分は所有者側で行う必要があります。
解体に適したタイミング
蔵の解体も、雨や雪による作業リスクを避ける意味で春や秋の晴れが続く時期がおすすめです。特に風の強い日は漆喰や瓦の飛散リスクが高くなるため、作業日程を天候に合わせて調整する必要があります。
倉庫・車庫・蔵の解体工事 費用の目安
解体工事において、費用は誰もが気になる大切なポイントです。しかし、建物の構造・材質・立地条件・付帯工事の有無などにより金額は大きく異なります。ここでは、倉庫・車庫・蔵の解体にかかる一般的な費用の目安と、見積もりを取る際に押さえておきたい要素を紹介します。
解体費用の目安(坪単価ベース)
建物の種類ごとの大まかな解体費用は以下の通りです(2025年時点の相場、地方や都市部により変動あり)。
倉庫(木造)・・・1.2万〜2.5万円
倉庫(鉄骨造)・・・2.5万〜4万円
車庫(木造)・・・1.5万〜2.5万円
カーポート(アルミ製)・・・3万〜10万円
車庫(RC造)・・・4万〜6万円
蔵(土蔵)・・・3万〜6万円
蔵(煉瓦・石造)・・・5万〜8万円
費用を抑えるためのポイント
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できるだけ建物内の荷物は事前に整理・処分しておく
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複数社に相見積もりを取り、工事内容を丁寧に比較する
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アスベストの有無や基礎の深さなど、情報を事前に業者へ共有する
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補助金や助成制度が使える地域では、役所に事前相談する(特に老朽危険家屋など)
倉庫・車庫・蔵は自分で解体・DIYが可能かどうか
「古い倉庫なら自分で解体できるのでは?」「カーポートくらいなら業者に頼むのはもったいない」といった考えから、DIYによる解体を検討する方も少なくありません。確かに、小規模な物置や屋根だけの簡易構造であれば、道具と安全対策さえあれば一人で解体できる場合もあります。しかし、DIYでの解体には法律面や安全面で多くのリスクがあるため、慎重な判断が必要です。
DIYが可能なケースと条件
DIYによる解体が可能なのは、次のような非常に限定されたケースです。
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構造が非常に簡易(例:ビス留め式の簡単なカーポート、木製物置など)
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築年数が浅く、建材の劣化やアスベスト使用の可能性がない
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高所作業が不要(屋根の解体や2階部分がない)
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周囲に障害物や隣家がなく、解体による破損や事故の心配がない
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処分する廃材の量が少なく、地域の粗大ゴミやごみ処理施設に持ち込める
こうした条件に当てはまる場合、時間と体力に余裕があれば、自己責任で解体を進めることも可能です。
DIYで解体できない、または避けるべきケース
以下に当てはまる場合は、原則として業者に依頼するべきです。
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アスベスト含有の可能性がある建材が使われている
法令により、アスベストを含む建材の取り扱いは有資格者しか行えません。誤って破砕すれば飛散の恐れがあり、健康被害の原因となります。 -
建築確認申請を伴う「建築物」の解体
建築物に該当する建物(ガレージや土蔵など)を解体する場合は、自治体に「建築物除却届」の提出が必要であり、無届けでの解体は違法です。 -
近隣との距離が近く、破片の飛散や倒壊リスクがある
解体中に部材が飛んで隣家や通行人に被害を与えた場合、すべての責任は所有者に及びます。個人では適切な養生や安全措置を講じるのが難しいケースが多いです。 -
RC造や鉄骨造など重機を必要とする構造
これらの構造物は、そもそも人力での解体が現実的ではありません。切断・粉砕・吊り降ろしなどの重作業を伴うため、経験と装備が必要です。 -
解体後の廃材処理が困難
解体によって発生する廃材は「産業廃棄物」として扱われることが多く、一般家庭のゴミとして処分できません。業者ルートでないと処分場に持ち込めないこともあります。 -
火災や感電などの危険がある
古い倉庫や車庫には、電気配線やガス管が通っていることもあり、誤った取り扱いで火災や感電事故を引き起こす危険性があります。
自力解体によるトラブル事例
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瓦が落下して隣家の窓ガラスを破損 → 修理費・賠償費用を全額自己負担
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不法投棄と判断され、行政指導・罰金対象に
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解体中に脚立から転倒し、骨折で長期入院
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解体後の廃材が処分できず、敷地に山積みになったままに
これらはすべて実際に起きている事例です。節約のつもりが結果的に高くついてしまったというケースも少なくありません。
安全・法令順守のためにも業者依頼が確実
DIYには「安く済ませたい」「自分でやりたい」という動機がありますが、安全面・法律面・処分面のリスクを考えると、ほとんどのケースでプロの解体業者に任せることが現実的です。専門業者なら法令を守り、適正な方法で安全に解体を進めてくれます。
まとめ
倉庫・車庫(ガレージ・カーポート)・蔵の解体工事は、一見すると小規模で簡単そうに思えるかもしれませんが、実際には構造の違いや使用されている建材、立地条件、法的手続き、安全対策など多くの要素を考慮しなければなりません。
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倉庫は木造や鉄骨造、コンテナ型などさまざまな形式があり、解体方法や費用に違いがあります。
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車庫はガレージ、カーポート、ビルトインガレージなど形式が豊富で、電動シャッターや基礎の有無が費用に影響します。
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蔵は文化財の可能性や伝統的な構造により、職人技を要するケースもあるため、最も注意が必要です。
費用の目安は、構造によって1坪あたり1万円台から8万円以上と大きく幅があります。また、アスベストの有無、基礎や残置物の処理、作業条件によっても費用は変動します。
「自分で壊せば安く済む」と思ってDIYを試みると、怪我や法令違反、トラブルにつながるリスクも。特に建築確認の対象となる建物やアスベスト含有の可能性がある建物は、個人で解体してはいけないケースが多く存在します。
安心して解体工事を進めるためには、複数業者から相見積もりを取り、対応の丁寧さや料金の明朗さを比較して選ぶことが大切です。また、各自治体によっては空き家や老朽建築物の解体に対して補助金を出している場合もあります。着工前に一度、お住まいの地域の制度も確認しておきましょう。
「長年使っていない建物をそのままにしている」「老朽化が進んで近隣に迷惑をかけそう」――そんなときは、信頼できる解体業者に相談することが、最も賢い第一歩です。